トランプ氏に猛毒リシン送付の疑い カナダ人の女を訴追

Pascale Ferrier
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アメリカのドナルド・トランプ大統領宛の郵便物から有毒のリシンが検出された事件で、カナダ人の女が22日に訴追された。女は無罪を主張している。

訴追されたのはカナダ・ケベック州在住のパスカル・セシル・ヴェロニク・フェリエ被告(53)。20日にカナダから国境を越えて米ニューヨーク州バッファローへ入ろうとした際に逮捕された。当局によると当時、フェリエ被告の車の中から銃と弾薬が見つかったという。

フェリエ被告は22日午後、バッファローの裁判所に出廷した。フランス語の通訳が同席したと地元メディアが報じた。

次の公判は9月28日の予定。空路で国外へ逃亡する恐れがあるため、米連邦保安局の施設で勾留されることとなった。

「特別な贈り物」

先週に同被告が送ったとされる手紙は、ホワイトハウスに届く前に押収された。

手紙には、トランプ氏に11月の米大統領選を辞退するよう求める内容が書かれていた。封筒からは猛毒リシンが検出された。

被告の初出廷前に米連邦捜査局(FBI)が提出した起訴状によると、被告は手紙に「お前の新しい名前を考えた。『醜い暴君の役立たず』(The Ugly Tyrant Clown)だ」とつづっていたという。

「気に入ってくれるといいんだけど。お前はアメリカを破滅し、大惨事を引き起こした。私にはアメリカ人のいとこがいるから、今後4年間お前に大統領を務めてほしくない。諦めて、立候補を取り下げろ」

FBIは手紙には被告の指紋が残されていたとしている。また、毒が含まれたメモには「特別な贈り物」、「うまくいかなかったら、もっと良いほかの毒物のレシピを見つけるか、アメリカへ行けるようになった時に自分の銃を使うかもしれない」と書かれていたという。

法廷資料によると、被告は刑務所や保安官事務所を含むテキサス州内の5カ所にもリシンを送っていた可能性がある。

複数の場所にもリシン入り郵便物

ホワイトハウス宛ての郵便物を検査する施設で見つかった郵便物について、FBIとシークレットサービスが捜査を進めている。

当局は、FBIが複数回検査をし、リシンの存在を確認したとしている。

テキサス州ミッションの警察の報道官は21日、AP通信に対し、1通の封筒が送られてきたが、被害者はいないと明かした。

同州ヒダルゴ郡の保安官エディー・グエラ氏も、リシンが含まれた封筒が複数送りつけられたが、負傷者はいないとした。

ケベック州の王立カナダ騎馬警察(RCMP)は21日、モントリオール郊外のサン=テュベールの住宅を家宅捜索した。当局はこの住宅は被告と関連があるとしている。

米税関・国境警備局(CBP)のマーク・モーガン氏は22日、フェリエ被告が20日に検問所に近づいた際、国境警備員に対して「ホワイトハウスや他の場所にリシン入りの封筒を郵送したため、FBIに指名手配されている」と話していたことを明かした。

パスカル・フェリエ被告とは

カナダメディアによると、フェリエ被告はフランス出身のコンピュータープログラマーで、2015年にカナダ市民権を取得した。

ロイター通信は複数の情報筋の話として、被告はフランスとカナダの二重国籍だと報じた。

拘置記録によると、不法に武器を携帯し、偽造免許証を使用した疑いで2019年3月にテキサス州で逮捕されている。

ビザの在留期限を超えて不法にアメリカに滞在し、犯罪を犯していたことがわかり、カナダに強制送還されたと米紙ニューヨーク・タイムズは伝えた。

リシンとは

リシンはトウゴマの種子から抽出される。飲み込んだり吸い込んだり、あるいは注射すると吐き気や嘔吐(おうと)、内出血、最終的には臓器不全を引き起こす恐れのある致死的な物質だ。解毒剤は存在しない。

影響は量によって異なるものの、リシンにさらされると36~72時間以内に死亡する可能性があると、米疾病対策センター(CDC)は説明している。

Castor seeds, which are used to make the deadly ricin poison
画像説明, トウゴマの種からリシンが抽出される

CDCはテロ計画で使用されることのあるリシンについて、粉末やミスト状、あるいは錠剤といったかたちの武器に製造できるとしている。

ホワイトハウスや他の連邦政府施設は過去にも、リシンを含んだ小包の標的になったことがある。

2013年には当時のバラク・オバマ大統領や政府職員に宛てた、リシン入りの封書が郵送途中で発見された。翌年には、ミシシッピ州在住の男性が禁錮25年の実刑判決を受けた。

2018年には、国防総省やホワイトハウス宛にリシンを含んだ封書を送ったとして、米海軍の退役兵が訴追された(審理中)。

リシンとは別に、2018年には野党・民主党の幹部や俳優、報道機関などに爆発物の入った小包が送りつけられた。

また2001年にはアメリカの複数メディアや民主党の政治家に、炭疽菌(たんそきん)入り容器の入った封筒が送りつけられた。